はじめに
9月10月といえば運動会・体育祭シーズンですね。
学校によってはもう終わっているところもあるかと思います。
近年はコロナ禍の影響で運動会も簡素なものになっていたところもあるかと思います。
今年はコロナ禍以前のような賑わいを見せる運動会が行われているところも多いのではないでしょうか。
運動会のはじまり
運動会の起源は、1870年明治3年に創立された海軍士官養成所『海軍兵学寮』。
当時はスポーツという概念が日本にはなく、兵学寮のカリキュラムも座学ばかり。
体育の授業で馬術や武道はするものの、体を動かす機会が少なかったのです。
その様子を見ていた日本滞在中のイギリス海軍顧問団団長アーチボルド・ルシアス・ダグラスは心配しました。
学生たちが座学ばかりで鬱々となり、よくない遊びに走るのではないか。
そういった思いからダグラスさんは一つの提案をします。
鬱々となりよくない遊びに走らないよう、運動を取り入れてはどうか。
その提案から学生たちのストレスを発散させるために、1874年(明治7年)3月21日、東京海軍兵学寮にて日本で初めての運動会『競闘遊戯』が行われました。
その後、同年に現在の北海道大学の前身である札幌農学校で「力芸会」という競技大会が行われ、1885年に東京大学で「運動会」という名前に変わったということです。
上記がきっかけとなり、初代文部大臣で一橋大学の創業者である森有礼は、全国の学校に運動会を義務付けました。
この時、軍隊式の集団訓練を通して、愛国の士気を高めることを目的とした『兵式体操』というものが導入されました。
現在も使われている「気をつけ!」「前へならえ!」「全体前へ進め!」という号令は兵式体操の名残だそうです。
昔の運動会で使われていた競技名
起源となった競闘遊戯で使用されていた競技名をご紹介します。
『すずめのすだち』 140m走
『つばめのとびならひ』 270m走
『あきのむくどり』 550m走
『ふるだぬきのつぶてうち』 遠投
『こもちざるのかけぬけ』 おんぶ競走
『とんぼのかざがへり』 棒高跳び
『とびのうをのなみきり』 幅跳び
『さぎのうをふみ』 三段跳び
『あけのからす』 270m障害物競走
『ぼらのあみごえ』 高跳び
『てふのはなおひ』 二人三脚
『かごのにげづる』 競歩
『ばしゃのはなれうま』 目隠し競走
『わしのいなとり』 豚追い競走
『うさぎのつきみ』 立三段跳び
『さるのももとり』 卵拾い競争
『すまのしほくみ』 水桶運び競走
『もろこしのしかおひ』 豚追い競走
名前だけ見ても一体何の競技かわかりませんね(笑)
その理由は、イギリス人がプログラムを考案し、英語で種目が書かれていたためだそう。
実際に競技に参加する日本人にはさっぱりわからず、翻訳する際におもしろい名前を付けようという提案があって付けられた競技名だそうです。
ただし、この競技名が使われたのは残念ながら最初だけで、すぐ普通の競技名に変わってしまったそうです。
「すずめのすだち」や「つばめのとびならひ」は『平がけ』、「ふるだぬきのつぶてうち」は『まり投げ』になりました。
「こもちざるのかけぬけ」は、競技そのものが廃止されてしまいました。
昭和になると、日本は戦争へと突き進んでいき、運動会も軍事色が強くなっていきました。
種目にも 『爆弾輸送』や『爆弾三勇士』など、戦争をイメージした名前が付けられるようになったそうです。
しかしながら、終戦がやってきて平和な時代へと移り変わるにつれて、軍事色の濃い種目や訓練的な種目はなくなり、近年の運動会の形式へと変化していきました。
昔の『よーい、ドン!』
これを読んでくださっているみなさんのスタートの合図はおそらく『位置について よーい ドン!』だと思います。
競闘遊戯が開催された時代は、陸上競技などもなく、当然のように別の合図を使っていました。
明治16年開成学校では、「いいか、ひい、ふう、みい」と言う掛け声とともに傘を振り下ろしてスタートするスタイルだったそうです。
明治の末期から大正にかけては、「支度して、用意 」「腰を上げて 待て! 」「ガッテン承知!」「おんちゃなケツ上げぇ!」といった掛け声を大声で叫んでのスタートをしていたようです。
そのような時代の中、日本陸上競技連盟が昭和2年、懸賞を付けてスタートの合図を一般公募をしたのです。
そして当時東京に住んでいた一般の方の応募した『位置について よーい』ドン!に決定。
実際には1964年の東京オリンピックが開催される頃までスタートの合図はバラバラだったとか。
今では定番のスタートの合図にもこんな歴史があったとは驚きですね。
おわりに
運動会は、友達同士・家族で思い出を作るひとつの大切な行事となっています。
時代の移り変わりとともに様々な変化を遂げていますが、思い出を作るという面に関しては何も変わらないことだと思います。
運動会は学校だけではなく地域でも行われている場所があったりしますので、たまには参加してみてもいいのではないでしょうか。
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