利用者様から素敵な写真をいただきました。
夏のはじまり、どこからともなく赤い小さな提灯のような実が目に留まると、私はいつも少しだけ心が懐かしくなる。それは「ほおずき」の実——けれど、あの印象的な朱色の袋の中に、そっと咲いていた花があることを、どれだけの人が覚えているだろうか。

小さな白い花の記憶
ほおずきの花は、初夏にひっそりと咲く。白く小さな五弁の花は目立つことなく、茂った葉陰で静かに揺れている。その花が散った後、やがてあのふくらんだ袋(萼)が膨らみ、実を包み込む。あの赤い風船のような姿は、子ども時代の遊び心や夏祭りの記憶を呼び覚ますけれど、その根っこには、ひとつの「見えない命の継承」がある。
ほおずき市と日本の夏
浅草寺のほおずき市は有名で、毎年7月に行われる。浴衣姿の人々が並び、涼やかな風鈴の音にまじって、ほおずきを手にする姿はまさに「日本の夏」の象徴。ほおずきの赤は魔除けや厄除けとも言われ、ご先祖様へのお供えとしても重宝されてきた。
この時期に飾るのは、亡き人への「灯り」の意味があるともされている。ご先祖様が迷わず帰ってこられるようにと、その鮮やかな赤は、私たちの祈りのかたちにもなっている。
儚さの中にある強さ
ほおずきの花も実も、長く咲き続けるわけではない。花はすぐにしぼみ、実はやがて袋が網のようになり、風に吹かれて枯れていく。その姿を見て、「命とは儚く、けれど確かに次の命へと繋がっていくものだ」と感じる。
人も同じように、目には見えない思い出や、誰かの言葉、優しさを受け継ぎながら生きている。ほおずきの花は小さくても、私たちの心に確かな灯りをともしてくれる。
おわりに
今年も、ほおずきを玄関に飾った。小さな提灯のような赤い実を見るたびに、忘れていた誰かの声や、夏の日の空気が心に蘇る。
ほおずきは、私にとって「静かに語りかけてくれる花」だ。
そして今年もまた、その灯りに導かれて、心静かに夏を迎えている。(写真:利用者様、文/構成:田中)


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