ガソリンの揺れ方の夜に — ゆれる心に寄り添う(鹿児島のグループホーム)

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夜の街を歩いていると、いろんな人の気配を感じる。
誰かの笑い声、誰かの溜息、誰かのため息まじりの歌。
それぞれがそれぞれの人生を抱えながら、静かにこの夜に溶け込んでいる。

街灯の光は優しく滲んで、まるでガソリンの表面がゆらゆら揺れるように、温かく、でも少しだけ不安定に漂っている。
人の心もきっと、そんなふうに揺れているのだと思う。

目には見えないけれど、胸の奥で絶えず揺れ動いている感情。
不安や寂しさ、焦りや孤独。
それでも、その中に小さな希望の光があって。
ほんのわずかな「誰かがいてくれる」という想いが、ゆれる心をそっと支えてくれる。

福祉の現場にいると、そんな心の揺れをたくさん感じる。
言葉にならない想いを抱えている人。
上手に助けを求められない人。
無理に笑顔をつくろうとする人。

だけど、誰もが本当は、ただ「わかってほしい」「大丈夫だよって言ってほしい」だけなのかもしれない。
寄り添うって、決して大きなことじゃなくて。
隣にそっと座ること。
黙って話を聞くこと。
「今日はゆっくりしようか」と声をかけること。

そういう小さな優しさが、揺れている心に静かに染み込んでいく。
まるでガソリンの揺れ方のように。
決して押し付けず、そっとそこにいるだけで、相手の心に灯りがともる。

人は皆、それぞれに揺れている。
でも、揺れながらも生きていけるのは、誰かの静かな支えがあるから。
そうやって、今日もまた、誰かと誰かが支え合って夜を越えていく。

この街のどこかで、今日もきっと。

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